マルシン・モーゼルM712シュネールホイヤー〜金属モデルガンからしか得られない栄養素がある…というのは事実だろうと思う…
金属モデルガンについてちょっと思い出話…
悪夢の46年規制をリアル厨房の時に経験していて、泣きながらモデルガンに黄色のペンキを塗りたくった実体験がある。
それからしばらくしてモデルガンは黄色か白のペンキ塗装だけでなく金色もお目こぼしいただけることに若干規制緩和された。
あの黄色ペンキ塗らされたのは一体何だったのかと憤りながら金ピカのモデルガンも手にしてみたが、テッポの色は黒という刷り込みがある世代なので金色のテッポには馴染めなかった。
そもそものテッポに黄色ペンキを塗るという体験がトラウマになり金属モデルガンはずっと敬遠していた。
金色にテカる金属モデルガンよりもABSのモデルガンならリアルに塗装できるし、自由に削ったり切ったり貼ったりもできる。
このページでもごく最初の頃にマルシンのABSモーゼル712を取り上げた。
ジャンク状態になっていた30年前に手に入れたABSモーゼルをなんとか完動品にして塗装もしてリアル化してみたけど、いまいち燃えないと感じて仕上げまでいかなかった。
ボルトを引いて装填排莢を繰り返しているとABSのフレームがぐにゃぐにゃ撓むような感じがして
「銃を扱っている」
という感じがしないんだなぁ…
ABSモデルガンは一つのジャンルではあるし精巧な銃の模型ではあるけど、銃の写し身というイメージが沸かないのが意欲がなくなった理由かもしれない。
今回金属モデルガンのモーゼルを入手して、ABSモデルとほぼ同じ構造なんだけど金属モデルガンからしか得られない栄養素…というものがあるなぁ…と実感した。
マルシン工業のMauser 712 シュネールホイヤーのジンクモデル
木製グリップもついてカートリッジなしだったけどまあまあリーズナブルに手に入った
金属モデルガンというと中古の場合大体手入れが悪くて
メッキが浮いて剥げていたりというコンディションのものが大部分だが
こういうマニアックなジャンルならコンディションがいいものも稀に手に入る
ABSモデルでもレシーバーサイドの肉抜きの
ミーリングマシーンの加工跡は表現されていたが
金属モデルガンはやはりこういう表現が一層くっきりしている
表面のメッキの状態もとても良くてほぼ新品といってもいい状態だった
チェンバー上の刻印の周りはABSモデルはヒケがひどくてゲンナリだったが
金属はほぼヒケがなくインゴットからの削り出しの実銃の雰囲気に近い
バレルの下側にはマルシンの刻印と22金メッキの刻印がABSモデルにはなかった
金属モデルガンなので銃身は完全閉鎖でしかも中に
超硬合金が鋳込まれているので改造は不可能になっている
銃口のライフリングとクラウンはキレイに表現されている
レシーバーの刻印には墨入れがされていて金メッキに映えるように加工されている
この複雑な形状は金属光沢がある材料だと映える
ボルトオープン状態
モーゼルはC96の流れで元々クリップで装填するのが
メインの操作法なので独立したボルトストップがない
ボルトはマガジンのフォロワーが直接キャッチしているので
リリースは装填してボルトを軽く引くという形になる
モーゼルの野戦分解手順
M712は近代オートのようにマガジンを抜くことができるが
もともとマガジン固定のC96は底板を外してスプリングと
フォロワーを抜くのが最初のステップだった記憶がある
ハンマーをコックしてハンマー付け根のテイクダウンレバーを上にあげる
するとバレルエクステンション・シアボックスグループがごっそり後ろに抜き取れる
シアボックスはバレルエクステンションにはめてあるだけなのでこの4点に分解できる
ファイアリングピンを押し込みながら反時計回りに90度回すと抜き取れる
ファイアリングピンを抜くとリコイルスプリングリテイナーも右に抜ける
ボルトグリップが別部品になっていて上に抜けるのはABSモデルにはなかった部品分割
こうしてボルトも分解できた
工具なしでもここまで分解は可能で1896年の
基本設計にしてはメンテナンスも含めてよく考えられている
ファイアリングピンは左に偏心したサイド発火でブリーチ全体が動くABSモデルよりもリアル
発火はする気がないが発火のためにもこの構造の方が不発は少ないと思う
板金プレスだったABSモデルのエキストラクターに対してこれもリアルな形状のキャスト部品
曲がりやすいプレスに対してキャストは割れるかもしれない
ガチャガチャ動かすならいろいろ調整が必要になりそう
フィーディングランプはなぜか全然滑らかではないザクザクの仕上がりで
傾斜も足りないので発火用カートリッジが100%詰まるジャムマシーン仕様
発火するにしろダミーカートモデルにするにしろこのままじゃ楽しくないので
ここは大幅に削って仕上げ直す予定
野戦分解はとても簡単だがここから先の分解は非常に頭を悩ますこと請け合い
まるで組み木細工のような精巧な部品構成のシアボックス
ショートリコイルロッキングのロッキングブロックはダミーだが
ちゃんと前後に動いてシアと連動する仕組みを再現している
シアボックスの反対側
セミオート用のシアとフルオート用のシアが独立していて
それぞれのポジションの時に違う動きをする近代的なメカが
すでにこの時代に実用化しているのに驚く
トリガーがシアを押し上げて激発を起こすがセミオートとフルオートの時では押す場所が違う
セミオートの時は後ろ側を押すのでシアが後退するとシアがトリガーからハズレハンマーは止まる
フルオートの時は前側を押すのでシアが後退してもトリガーは外れない
フルオートシアがハンマーをキャッチするがセミオートの時はトリガーを引き続けると
トリガーバーがフルオートシアを押さえているのでフルオートシアは無効になっている
フルオートの時はシアを押し上げるトリガーはシアが後退しても外れない
ボルトが後退するとフルオートシアがハンマーを一旦止める(上)
前進したボルトがフルオートシアの髭を前に蹴るとフルオートシアが
外れてハンマーが落ちて激発する(下)
トリガーを引き続けている限りこれを繰り返し機関銃のようにフルオート射撃ができる
シアボックスを分解をしない限り組み立てに大きなハマりポイントはないが
ハマりやすいのはフルオートシアの髭をボルトトリガーの後ろに入れてしまうミス
普通にシアボックスをバレルエクステンションに組み合わせるとこの位置になってしまうが
このまま組み立てるとフルオートポジションでハンマーが落ちなくなる
この個体も入手した時はこの状態だった
正しくはこのようにボルトトリガーの前に髭を入れないといけないので
シアボックスとバレルエクステンションを組み合わせる時に軽くボルトを引くとうまくいく
これ知らない人が多くて「シュネールホイヤーフルオートで撃てなくなった」とボヤく人は結構多い
金属モデルガンのシュネールホイヤーはABSモデルと
ほぼ同じ構造なんだけど手に持った時の触感が全然違う
ずっしりと重いしひんやりと冷たい…ボルトを戻すときの「シャキッ」という音も全然違う
何よりもレシーバーがしならない…がっしりした質感が「ドイツの銃」という感じ
色は金色だけどやはり金属モデルガンでないと得られない栄養素というのは確かにある
これも語り尽くされたことだけどモーゼルの3ポジションセーフティ
一番押し込むとハンマーダウンできるがファイアリングピンを叩かない(左)
半分押し込むとコックアンドロック(中)一番引くと発射可能ポジションになる
130年前の設計とは思えないモダンなデザインだと思う
ローディングクリップの使用例
かれこれ40年ぐらい前かなGun誌の特集でC96レッドナインの
写真を表紙に使っていてこの写真に惹きつけられてしまった
その構図がこんなだったと思う…9ミリパラベラム弾が10発クリップで
エジェクションポートに刺されているのを見てモーゼルに一目惚れしてしまった
その写真を見て以来モーゼルのモデルガンを探し続けたが
「ハドソンはお勧めできません」とガンショップの店員さんの冷たい対応
MGCはすでに入手難になっていたしこのクリップを
再現したかったのでガスガンにははなから興味がなかった
消去法でマルシンの712だが本当はレッドナインが欲しかった…
ホルスター兼用のストックと20連マガジン
ストックの装着はかなり硬いがこの通りハマればピッタリ…
純正部品だから当たり前か…
このストック取り付け溝は後加工の削り出しなのでかなり工作のバリが残っていた
取り付けが固かったのもそのせいで削り合わせをしたらスムーズに装着できるようになった
エジェクションポートからタンジェントサイトにかけてのメカメカしいライン…
今回の本体はカートリッジなし・本体のみだったけど
ABSモデル用のオプションがすでにあったので気にならなかった
ストック兼ホルスターと20連・10連マガジン
マルシンのモーゼルのいいところはこういうオプションが多いことかな
こういうこともあろうかとつとに手に入れていた30口径モーゼル弾ダミーカート
エジェクションポートにダミーカートが見える光景はガスガンでは決して味わえない
ただしRIGHT製のダミーカートの通例で実弾と比べて微妙にサイズが大きいようで
マガジンには6発しか入らないしエキストラクターとも微妙に噛み合わない
クリップにも微妙にサイズオーバーで装着できないので
10発クリッピングしたカートをエジェクションポートに挿す光景も再現できない
今のところテッポと並べて眺めて楽しむ以外の活用法はない
今のところはこんな感じかな…
もともと発火させる気はないしディスプレイ用…とは思っていたけど
ダミーカートがローディングできないのはちょっと寂しい
次はこの辺りの加工をちょっとチャレンジしてみるかな…
2025年6月28日
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